長谷川京子さん『去年1年はどっぷり沼期』40〜50代の“薄ら不安”どう乗り越える?
「このままでいいの?」と、薄ら不安を覚えている40、50代の皆さん。それって沼期かもしれません。しかしながらその沼は深く、ハマるほどに後の人生が上向く良き兆候であり、今だからこそ訪れる必然のもの。『VERY NaVY』で好評連載中の「50代のロールモデルがいない⁉︎」では、エイミーこと龍淵絵美さんと仲良しの長谷川京子さんをゲスト迎え、沼期を語りました。
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「50歳、今は走りたくて仕方ない」–Amy
「今は女性観より人生観に興味がある」–Kyoko
エイミー(以下、A) 京子ちゃんとは、共通の仕事仲間を介して知り合いに。出産のタイミングが近くて、子育てや母親になってからのキャリアをどうするとか、“今話したい話題”が共通していたことでグッと距離が縮まった気がする。
長谷川(以下、H) エイミーさんは探究心旺盛だから、仕事にしても子どもの進学にしても、いろんな情報を持っていて。私にとって、頼りになる良き相談相手。観たい映画や舞台の好みも合うから、一緒に鑑賞して感想を語り合うカルチャー友だちでもあります。「この作品から何を思ったか」、エイミーさんの考察は聞きたくなる魅力がある。
A それは、こちらも♡ 作品と考察で2度の刺激が得られるいい時間。会話の最後に辿り着く話題はいつも「これからをどう生きるのか」だよね。
H 壮大なテーマで毎度話が尽きない。私は40歳から数年は“完全に母親だった自分”がどこまでひとりの女性として盛り返せるかに意識が向いていたけれど、46歳になった今は女性観よりも人生観に興味がある。
A 人生にも季節があるよね。私は40代後半で父の死と更年期が重なり落ち込んだけれど、少しずつ抜けてきた感。今は思いっきり走りたい!
H すごく素敵。私は逆に、去年1年はどっぷり沼期。年齢的なものもあるのかなと思うけど、社会のルールもガラリと変化してキャリアの先行きが不安になったのも一因。「このままじゃいけないんだろうな」と内省を繰り返し、いろいろ動いてみるも同じことをなぞってばかりで。全然答えが出なかった。これ以上は意味がないかもと、内省にも飽きてきちゃって。飽きるほどに自分と向き合うのも、私が欲していたひとつの答えなのかもと思ったり。
A わかる。母になり妻になり、仕事でも頼られる立場になってきて……。歳を重ねると役割がどんどん増えて、自分の軸がぼやけがち。私がスレッズを書き始めたのは、その曖昧になった軸を整えるジャーナリングの要素もあったのかも。
H ただ書くだけじゃなくて「本にしたい」とちゃんと目標を掲げ、たった1年で叶えてしまう実現力がすごいと思う。
A ありがとう。でも、大人って何かを始めるときに、まず箱から整えようとするけど、安全な箱なんて簡単に整わない。「とりあえず、やっちゃえ!」みたいな気持ちはいくつになっても大事だと思う。
H 本当にそう。周囲の反応を気にしていたら動けない。私もエイミーさんのスレッズに影響されて、どこにも公開していないけど自分史を書き始めて。今、自分を不安にさせるものは過去のなかにあるのかなと考えたりしてる。
「箱を整えるより、とりあえずやってみる!」–Amy
「エイミーさんに影響されて自分史、始めました」–Kyoko
A 過去を振り返ると、蓋をしていた感情に気づいたりするよね。私はスレッズを書くうえで登場人物に事実確認をしたんだけど、思い出を都合よく美化していたことが判明したり。
H 私調べでは、やり過ごしたつもりでいたけど実は納得できていなかった傷や痛みは、自分から会いにいって癒してあげるのが大事みたい。自分史を書きながら、母親とも一度じっくり話したいなと思っていて。「あのとき私はこうだったけど、お母さんはどうだった?」と。確認したら、違う思いが隠れているかもしれない。今、そのきっかけを探し中。
A 親とも向き合うタイミングなのかも。忙しい(笑)。でも、楽しいことで誤魔化さずに沼にどっぷり浸かるのもいいと思う。
H うん。ちょっとずつでもわかるって、気持ちのいいこと。だから沼に浸かっていても辛くないし、この時間が必要と思えた気がする。今後も課題は一生出てくるよね。
A 玉ねぎの皮みたいに剝いても剝いても、だろうね。でも、向き合う課題がなくなっちゃうのも退屈なんだと思うよ、きっと。京子ちゃんは悩みながらも形にするのが得意な人だから、いつか京子ちゃんの自分史を読める日が来るんだろうなと楽しみにしてる。
H とりあえず、書き続けてみるつもり♡ いつものふたりの会話が、とうとう公に(笑)。これをネタにまた語らえたら!
2人のオススメ今年注目の“女性映画”




1.50歳女性の若さと美しさへの執着!
『サブスタンス』
「美に執着する女性がテーマの作品で“なるほど、ハリウッドは今度はそっちでいくのか”と熟女の動きにフォーカスしているのが時代だし、新しいなと思いました」(長谷川さん)
2.女性CEOの欲望が若き青年に暴かれる
『ベイビー ガール』
「若き青年に翻弄される57歳のニコールもまた美しい!」(エイミーさん)
3.安楽死を望む女性の最期とは
『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』
「京子ちゃんと感想を語り合いたいと即連絡した作品」(エイミーさん)
4.幸せを全力で勝ち取る
『ANORA アノーラ』
「アカデミー賞で作品賞など、5つの賞を受賞。すべての女性に見てほしい」(長谷川さん)
Profile

龍淵絵美さん-Emi Tatsubuchi-・長谷川京子さん-kyoko Hasegawa-
龍淵絵美さん
ファッション ディレクター。モード誌のエディターとして出版社勤務を経てフリーランスに。現在はブランドディレクションのコンサル業でも活躍。著書『ファッションエディターだって風呂に入りたくない夜もある』(集英社インターナショナル)が発売中。 Instagram/Threads@amy_tatsubuchi
長谷川京子さん
ファッションモデルとしてデビュー。俳優として活躍する傍ら、ランジェリーブランド「ESS BY(エス バイ)」にプロデュースやファッションブランドとのコラボレーションも手がけ、自身のYouTubeチャンネルでも積極的に発信を続ける。[email protected]
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撮影/中田陽子〈MAETTICO〉スタイリング/田中雅美(長谷川さん分) ヘア・メイク/美舟〈SIGNO〉 取材・文/櫻井裕美 編集/磯野文子
[長谷川さん]トップス¥300,300パンツ¥250,800シューズ¥247,500※参考色(すべてボッテガ・ヴェネタ/ボッテガ・ヴェネタ ジャパン)
*VERY NAVY 5月号「50代のロールモデルがいない!?」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。